本・映画・音楽・ドラマ

50代ライターが選ぶ【2023年秋・勝手にドラマランキングBEST5+1】

本・映画・音楽・ドラマ

隠れドラマオタク、昭和世代のライター・風月が、2023年秋ドラマから自分の好みだけで勝手に選んだBEST5+1。
前評や視聴率、口コミ等は全く関係ない、独断です。
*安定のシリーズ「相棒22」は除外

今期は、前期夏ドラのようなどかーんと派手なエンタメ系ドラマはなかったけれど、地道に生きる日々の暮らしの中で「人の優しさ」や「小さな幸せ」がしみる秀逸なドラマがたくさんありました。

「セクシー田中さん」~キャラクターの掘り下げが秀逸!

『セクシー田中さん』日本テレビ
キャスト:木南晴夏・生見愛瑠・前田公輝・安田顕 他
脚本:相沢友子・芦原妃名子
原作:「セクシー田中さん」芦原妃名子著 小学館
全話配信:Hulu

経理部で淡々と完璧に仕事をこなす田中さんは、友人も恋人もいない真面目で地味なアラフォーOL。しかしその一方で、抜群のスタイルをあらわに妖艶に踊るエキゾチックなベリーダンサーという顔を持つ。
木南晴夏さん演じる田中さんの見事すぎるギャップにホレボレしつつ見始めたこのドラマ、ただのコメディーと侮るなかれ。
秀逸な脚本と役者さんの個性と演技力が相まって、今期ぶっちぎりに面白いドラマでした。

なんといってもキャラクターの掘り下げ方が秀逸。すべての登場人物が抱えている人間らしい葛藤や生き方が繊細に描かれています。
中でも、思ったまま失礼なことを口にしてしまう「デリカシーゼロ」のサラリーマン・笙野や、容姿、学歴、年収等で人の価値を決めるチャラ男・小西など、クセのあるムカつく野郎たちが、回を追うごとに魅力が急上昇いくのが気持ちいい。
彼らは田中さんに出会ったことで自分自身の葛藤に気づき、自分に向き合い、大切なものを取り戻していく。

早々にその魅力に気づき「田中さん推し」となったイマドキ女子の会社後輩・朱里のセリフが深い。
 「田中さんが笙野に尊重されるのは、田中さんがすべての人を尊重しているからだ」
このシーンでは、映画「マダムインニューヨーク」でのマダムのセリフも引用されている。
 ”恋はいらないの。欲しいのは尊重されること”
朱里はこれに続ける。
 「夫や子どもから雑に扱われている主婦は、自分を助ける最良の人は自分であると知っている」
このセリフ、刺さる人も多いのでは。

「あたりのキッチン!」~頑張る若者を見守る大人たちの眼差しが優しい

『あたりのキッチン!』東海テレビ・フジテレビ
キャスト:桜田ひより・渡部篤郎・窪塚愛流・工藤美桜 他
脚本:橋本夏・ニシオカ・ト・ニール
原作:「あたりのキッチン!」白乃 雪 著(講談社アフタヌーンKC)
全話配信:FOD・U-NEXT

極端に人見知りでコミュ力ゼロだが、一口食べただけで食材や調味料の配合まで的中できる「絶対味覚」をもつ大学生・清美。
アルバイト先の定食屋「阿吽あうん」でアルバイトをしながら就活をする中で、料理を通して人とコミュニケーションができることを学び、成長していく。

悩みを抱えながら頑張っている若者たちを見守る大人たちの眼差しが優しい。
渡部篤郎さんが演じる「阿吽」の店主・善次郎は、お客さんだけでなく、清美や清美の大学の友人、高校生の息子など、若者たちにもひとりひとり丁寧に向き合う。
 「人が生きていくってことは、何か困った時に助けてもらえる相手を家族以外にどんどん増やしていくということ」
 「慌てずにひとつひとつ丁寧にやっていけば大丈夫」
 「『自分に何ができるのか』ではなく『自分は何がやりたいのか』ではないですか」

こんなことを説教くさくなく、静かに語りながら、お客さんそれぞれにあった定食を提供してくれる店主。
近くにこんなお店があったら、毎日通ってしまいそう。
風月が住むショッピングセンターが立ち並ぶニュータウンにないものが、地域に根付いた人情あふれる「商店街」。いいなあ。

まあ、現実はそんな温かい人ばかりでなく、世知辛い世の中で辛い思いもすると思うけれど。自分にもできる形で、頑張るワカモノたちを温かく応援できる大人でありたいと思う。

「家政婦のミタゾノ 6」~シュールな笑いを誘う妖怪キャラがパワーアップ

『家政婦のミタゾノ 6』テレビ朝日
キャスト:松岡昌宏、伊野尾慧、桜田ひより、余貴美子 他
脚本:八津弘幸
全話配信:TERASA

松岡昌宏さん扮するジェンダーレスの妖怪キャラ「ミタゾノ」が、第6シリーズにして、深夜枠からゴールデンタイムへ引っ越してきた。
第1シリーズからハマっている風月にとっては嬉しい限り。

派遣された家庭の内情をのぞき見し、秘密を暴くことで結果的に更生へと導いていく。悪事の証拠品をわざと落とし、「本日の家事情報」のノウハウにこじつけながら真相を明かすお約束。
 「こびり付いた汚れはなかなか落ちないので早めに対処するのが肝心。一方汚れたと思っていたらそうではないということもごさいますね」
そして最後には、善良だと思っていた人間の闇を見せるのもお約束。
世の中きれいごとだけではないというオチがシュールな笑いを誘う。

いつもかん高いオンナ声&上品な(?)セリフで理屈をこねているミタゾノが、突然ドスのきいたオトコ声になり、腕力にまかせて力ずくでねじ伏せる場面が爆笑もの。
「フンっ」という皮肉笑いを除き、最後まで一切笑わなかったミタゾノだが、最終回のクランクアップ後のオマケシーンで一度だけ笑顔を見せる。それを見て「ああ、そういえば松兄(松岡さん)だったんだな」と思いだした。
それほどにキョーレツなキャラが作り上げられているのだな。
あっぱれとしか言いようがない。

「きのう何食べた?season2 」~日常の中にある幸せに気づくこと

『きのう何食べた?season2 』テレビ東京
キャスト:西島秀俊・内野聖陽・山本耕史・磯村勇斗 他
脚本:安達奈緒子
原作:「きのう何食べた?」よしながふみ 著(講談社モーニングKC)
全話配信:U-NEXT Lemino

几帳面な弁護士・シロさん(西島秀俊)と、人当たりの良い美容師・ケンジ(内野聖陽)のカップルが、アパートでつつましくも幸せに暮らす日常を、その食生活を通して描く。

お互いをリスペクトし、思いやり、感謝し合えるパートナーと「食」を一緒に楽しむことができる。
これに勝る幸せはないのかもしれない。

 「『そうか、今俺幸せなんだ』と気づく瞬間がある」
とは、シロさんのつぶやき。
あたりまえと思っている生活にある幸せも、それに気づかなければただの日常。失って初めて気がつくのでは、あまりにもったいない。
風月は「一人飯」を楽しむこともあるけれど、大好きな娘や友人、仲間たちと一緒においしいご飯を食べる時間はやっぱり極上の幸せだ。
あらためて、大切にしてきたいと思う。

主題歌のスピッツ「大好物」が温かく心にしみる。

「うちの弁護士は手がかかる」~主題歌と個性が光るキャストが見どころ

『うちの弁護士は手がかかる』フジテレビ
キャスト:ムロツヨシ・平手友梨奈・戸田恵子・吉瀬美智子 他
脚本:服部隆
全話配信:FOD

主題歌は、THE ROLLING STONES『アングリー』。
風月はドラマの前評を一切見ないので、まずは初回でこの曲が流れてきた瞬間に腰を抜かしてしまった。
ストーンズのプロモーションビデオに即したパフォーマンスらしいのだが、なぜか聴いたことがない曲。調べてみると、なんと18年ぶりの新曲がリリースされていたのだ!
ううう…平均年齢80歳にして、ストーンズ健在。神。涙もの(T_T)。
昭和世代の風月はこれだけでテンションが上がりまくり、いまだに頭の中をグルグルと回っています。
「アングリー」はアルバムからシングルカットされています。

さて、ドラマ評でした(^^;。
芸能人のマネージャーをクビになり、弁護士のパラリーガルへ転職することになった蔵前勉(ムロツヨシ)。どちらも表に立って輝く主役となる人間を裏で支えサポートする仕事だ。
「自分にできることなんてこれくらいしかない」と自虐しながらも、そんな仕事に誇りを持っている。
病んであたりまえと思われるパワハラを受け、生きる希望を失った設定なのだが、思い詰めることなく自分を客観視して、いつのまにか主役をあしらいながら「育てている」。
 「これから輝くであろう未来しかない子どもを裏で支えて育てていきながら生きていくっていうのもカッコいいっすよ」

この絶妙な役柄を演じているのは、淡々としたどこか達観した演技が魅力のムロツヨシさん。オヤジにありがちな上から目線やおごりがなく、ボサボサ頭でもなぜか清潔感がある不思議な役者さんだ。
蔵前が育てる「ツンデレでコミュ症の天才弁護士」を演じる平手友梨奈さんもハマり役だったのでは。

次第に互いを認め合い最強バディに成長していく、というベタな展開ではあったけれど、役者さんたちの個性が光るキャラがたっていて、楽しく観れました。

蔵前のもうひとつの名ゼリフ。
 「本当の気持ちを察してほしいなんて甘えないでください。
あなたの気持ちを言葉にできるのはあなただけなんですから」

ほんと、「察してちゃん」にだけはなってはいけないな、と思います。

+1「ゼイチョー ~払えないにはワケがある」~日本を担っている官僚さんたちにもの申す

『ゼイチョー ~払えないにはワケがある』日本テレビ
全話配信:Hulu

税金の徴収だけでなく、「公務員」という仕事に焦点をあてている。公務員は安定している仕事のトップに挙げられるが、国民の税金からお給料が出ているだけに、世間の目は厳しい。
特に圧倒的に人口が集中している都会の現場では事務的な対応にならざるをえず、このドラマの職員さんたちのように個々の事情によりそって奔走してくれる余裕などはないのが現実だろう。

けれどだからこそ、行政は生活が苦しい時の最後の砦であってほしいと願う。

キメゼリフの「公務員なめんなよ」とは、公平・公正・平等を信念としてブレないからこそ言えるセリフだ。
こうしている間にも、次々と不正によって辞職に追い込まれているトップ閣僚の方々、このセリフが言えますか。

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