本・映画・音楽・ドラマ

50代ライターが選ぶ【2023年夏・勝手にドラマランキングBEST4+3】

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隠れドラマオタク、50代昭和世代のライター風月が、2023年夏ドラマから自分の好みだけで勝手に選んだBEST4+3。
前評や口コミ、視聴率は全く関係ない、独断です。
*以下、2位「ハヤブサ消防団」以外はネタバレもありますのでご了承ください。

「シッコウ‼~犬と私と執行官~」 ~全うなオトナたちの静かなパワーがカッコいい

『シッコウ‼~犬と私と執行官~』 テレビ朝日

キャスト:伊藤沙莉・織田裕二・中島健人・長窪桂十郎 ほか
脚本:大森美香
原案:「執行官物語」小川潤平
全話配信:TERASA

弁護士、裁判官、刑事、捜査官など、ドラマでは出尽くした感がある「法律を守る仕事」。
そんな中であまり知られてない(ドラマで取り上げられるのは初めて?)「執行官」という仕事を通して描かれる「現代の人間ドラマ」です。

裁判での結論が実現されない場合に、それを強制的に実現させる「執行官」。
言ってみれば「司法の最後の砦」なのだが、財産の差し押さえや子どもの引き渡しなど、人から嫌煙されがちな仕事だ。

ひょんなことからこの「執行」という仕事に関わることになったヒロイン(伊藤沙莉さん)も、始めは「こんな仕事は普通じゃない。胸が痛い。ザワザワする」と抵抗を示す。
それに答えて、「執行の現場は人の極限状態、感情がぶつかりあう。関わるにはパワーがいる」と悩みながらも、「人生に区切りをつけてリスタートするために必要なこと」と信念を持って執行にあたる執行官たち。

織田裕二さんが演じる執行官は、バツイチで犬が苦手で腰を痛めている冴えないおっさん。(最終回で披露した湘南爆走族アキラ(織田さんのデビュー役)の長ラン・リーゼント姿には笑った~(≧▽≦))
とりまく執行官たちとの間では「ソース顔・しょうゆ顔」だの「草食系・肉食系」だの、昭和世代トークが繰り広げられる。
そんな、「ヒーロー感」とは全く無縁の、地道に経験を積んできた「全うなオトナたち」の静かなパワーがカッコいい。

風月と同世代のちょっと疲れた50代オヤジ(織田さん)と、パワーあふれる20代女子(伊藤さん)の、「親友」という関係性もとてもいい。
50代後半ともなってくると、求めるものはお互いにリスペクト・信頼しあっておだやかに過ごせる人間関係だ。
年齢や性別を超えた、こんな関係性にあこがれる。

脚本はNHK大河ドラマ「青天を衝け」や朝ドラ「あさが来た」などを手掛けた大森美香氏。
重くなりすぎないテンポのよいセリフ回しもさることながら、さすがに「時代」を描くのがうまい方だなあ、と思います。

最終回で執行官を目指すと決めたヒロインのセリフがすべてを語っていました。

『どんなにつらい状況になっても、もう一度生きて行こうとする人がたくさんいた。
目を瞑らずに歩き出そうとしていた。
人生をリスタートしていた。
人間は弱虫でズルいばかりじゃない。
時には図太くて 時には気高くて 
「生きていく力」をちゃんと持っている。』

ところでこのドラマ、『執行官物語』という小説が「原案」(原作ではなく)となっていました。
著者の小川潤平氏は執行官として勤めた経験があり、『執行官物語』はその時の経験をもとに執筆されたのだそう。
残念ながら現在(2023年)は絶版となっています。

「ハヤブサ消防団」 ~池井戸潤氏の真骨頂ミステリー

『ハヤブサ消防団』 テレビ朝日

キャスト:中村倫也・川口春奈・山本耕史・満島真之介・生瀬勝久 他
脚本:香坂隆史
原作:『ハヤブサ消防団』 池井戸潤
全話配信:TERASA

池井戸潤氏原作のドラマといえば、TBS日曜劇場『下町ロケット』『陸王』『半沢直樹』や、テレ朝系列『民王』などの硬派なビジネス系エンターテインメントを思い浮かべる人が多いと思うが、もともと池井戸氏は「江戸川乱歩賞」受賞作品『果つる底なき』でデビューしたミステリー作家。
今回はその原点ともいえるミステリー要素満載の「ハヤブサ消防団」のドラマ化ということで、いやおうなしに風月の期待もふくらんでいました。

閉鎖された小さな集落で、静かに、そして不気味に展開されていく予測不能なミステリー。
2人のメインキャスト、中村倫也さん、川口春奈さんの淡々とした演技がハマりまくり、脇を固めるベテラン勢のキャストも秀逸でした。
ミステリー作家としての池井戸氏の真骨頂とも言える作品なのでは。

風月は原作を読んでいなかったので、より一層楽しむことができました。
なので、これからこのドラマを観る方のためにストーリーには触れません。
しっかり伏線を拾いながら、上質のミステリーをお楽しみくださいませ。

ひとつだけ苦言を呈すると、最終回は無理やり9話でまとめようとした感があり、ちょっと残念だったかも(^^;。

「VIVANT」 ~ドラマにかける気概がハンパない

『VIVANT』 TBS

キャスト:堺雅人・阿部寛・二階堂ふみ・役所広司・二宮和也・松坂桃李 ほか
原作・演出:福澤克雄
脚本:八津弘幸 他
全話配信:U-NEXT(Paravi)

私はドラマを観る時は(先入観を持ちたくないので)視聴率やクチコミを一切見ないことにしているのだけれど、今期の視聴率はこの「VIVANT」がぶっちぎりでトップを独走したであろうことは想像に難くない。
なにしろ前宣伝が全くなく、キャストもギリギリまで公開されず、いきなりドカーンと始まったかと思うと、ハリウッド並みのスケールのでかい海外ロケに加え、豪華俳優陣が目白押し。
初回の2時間は「ひええ…これは制作費に一体いくらかけているのだ?」と、余計な詮索が頭をめぐり、終わった頃にはすっかり「お腹いっぱい」に。

さらに2話以降もそのテンションのまま、馬やヒツジの群れ、カーアクション、砂漠の放浪等、「インディ・ジョーンズ」ばりの冒険アクションが続く。
あらゆる場所に事件の伏線が仕込まれていて、裏切りや予想外の思惑で、ジェットコースターのような速さで2転3転していくのである。
後半は「スターウォーズ」のダースベーダ―とルークの父子関係か?と思われる展開になるが、そこにファンタジー要素はなく、ギリギリの現実路線は外さない。

原作・演出を担当している福澤克雄氏は、TBS「日曜劇場」の『半沢直樹』や『下町ロケット』『陸王』等を手掛けたヒットメーカー。
主演の堺雅人さんや阿部寛さん、役所広司さん等もそれらの日曜劇場で主役をはっていたおなじみの俳優陣。
「日本のドラマでここまでできる!限界に挑戦!」という、スタッフの方々のハンパない気概を感じました。

…と言いながらなぜ3位なのか。
ひとことで言うと、あまりに「盛り込みすぎ」、そして「もったいない」展開だったというか…。
毎回繰り広げられる裏切りや伏線の回収、真相への予想考察に終始してしまい、どっと疲れ、次々とおこる大どんでん返しに、最後には何がおこっても驚かなくなってしまったのである。
また、豪華な俳優陣が次々に出てくるものの、その人間性を描ききれないまま入れ替わっていくので、キャラクターに思い入れができず(乃木が二重人格である必要あった?とか 笑)。
回を追うごとに伏線の回収説明が増え、加えて演劇の舞台のようなセリフ(脚本)が、ドラマではどうしても大げさになりすぎてしまうこともあり。

けれど、最終回では続編に向けての伏線ともとれるシーンがたくさん盛り込まれていたので、次からはもう少しじっくりと掘り下げた人間ドラマが描かれるのではないかという期待をこめて!続編を楽しみにしています。

「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」 ~見どころは生徒役の圧巻の演技力

『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』 日本テレビ

キャスト:松岡茉優・芦田愛菜・加藤清史郎 ほか
脚本: ツバキマサタカ
全話配信:hulu

兄が自害で亡くなっている風月にとって、このテーマのドラマを見ることはとても勇気がいりました。
「いじめ。自害。それに向き合う学校や教師のあり方。残された人間の生き方。」
重い。答えの出ない、ひたすら重いテーマです。

タイムループや真相考察などのミステリー要素があったので、このテーマが軽視されていたら嫌だなと思いながら恐る恐る見始め、途中から目が離せなくなり、結局最後まで視聴。
「絶対に自分で自分の終わりを選ぶべきじゃない
生きていれば変わるから 絶対に変わるから」
そう言い切れる説得力があったかというと、正直弱いなーとは思ったけれど(特に、亡くなった生徒の母親がたった一ヶ月でその死に向き合うことができるとは到底思えず)、少なくとも、この答えの出ない重いテーマと正面から向き合った作品だったとは思います。

特筆すべきは、生徒たちの演技力。中でも主演の芦田愛菜さんや、いじめ役の加藤清史郎さんは、チープになりがちな難しいセリフを圧巻の演技でカバー。
また、瑞奈ニカを演じた詩羽(うたは)さんが文化祭で歌った椎名林檎さんの「17」は、50代昭和ミドル世代の胸にもざっくりと刺さりました。
(歌羽さんは音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の2代目ボーカル)

「覚悟をもった本気は、世界を、常識を変える」
本当にそれが実現できる世の中であってほしいと思う。

+番外編 心に残った名シーン&癒し系ミニドラマ 3選

他にも心に残った名シーン、ほっと癒されたミニドラマなど

「ばらかもん 第6話」 ~逝く人が残すもの、送る人が引き継ぐもの

『ばらかもん』 フジテレビ

キャスト:杉野遥亮・琴石なる・網啓永 ほか
脚本: 阿相クミコ・金沢達也
全話配信:FOD
原作:『ばらかもん』 ヨシノサツキ
(ガンガンコミックスONLINE/スクウェア・エニックス刊)

子役ちゃんの「アハハハハ!」という棒読みの笑いと学芸会演技にのけぞりつつ(笑)、それもまたご愛敬で許せる、ほのぼの「離島」の人情ドラマ。

神回だったのが、島で慕われていたひとり暮らしのお年寄り「ヤスば」が亡くなる第6話。

島の子どもたちは皆、ヤスばを始め町の「大人たち」から見守られながら育ってきた。
最後までヤスばお世話をして看取ったのも、血のつながった親族ではなく、ヤスばにかわいがられていた近所の女性だ。
葬儀後の「野辺送り」では、町民たちの名前を書いた旗を持ち、埋葬場所まで皆で故人を送っていく。

主人公が書道家として賞を取れずに悩んでいた時にヤスばからかけられた言葉が心に染みる。
 「上ばかり見ていたらだめ。チャンスは意外と下におちてる」
 「お先にどうぞ」
そんな言葉をもらった主人公が亡くなったヤスばを思い、つぶやく。
 「ヤスばとのつきあいは短いけど、村の人たちの中で生きているヤスばとつきあっていけるといいなと思う。」

地域で人を育て、地域で人を看取る。
人とのつながりが薄い都会で生きていると、逝く人も残された人も、こんな風におだやかに人の死を迎えることなんて果たしてできるのだろうかとさえ思ってしまうのだが。
実際には、医療等、離島ゆえのキビシイ現実があるだろうけれど、それでもこんな風に自然に死を迎えられたらどんなにいいだろうと思ってしまう。

風月の愛読絵本「わすれられないおくりもの」に通じる死生観でした⇩。
https://tsukitoyanagi.com/wasurerarenaiokurimono/

「晩酌の流儀2」 ~充実した日々を楽しむためのヒント

『晩酌の流儀2』 テレビ東京

キャスト:栗山千明 武田航平 辻凪子 ほか
脚本:政池洋佑
全話配信:U-NEXT、Amazon Prime Video ネットもテレ東

週末金曜日の深夜、毎回この言葉で始まります↓

”1日の最後に飲むお酒をどうしたら最高に美味しく飲めるのか。
このドラマはそれをひたすら追求するひとりの女性の物語。
お酒のおいしさは一日の自分の行動次第で0にも100にもなる。”

仕事を頑張る。
お腹をすかせるために運動をする。
休日は食材を手に入れるために釣りに行く。
すべては1日の終わりの「ひとり晩酌」を充実させるため。

育ちざかりの子どもがいる時は時間に追われ「頑張って」作っていた食事だけれど、ようやく手が離れ、いざ自分の分だけでいいとなると、どうしても手を抜いてしまいがち。
今こそ自分のために丁寧に「食」を楽しめる時間ができたのに、もったいない話だなと気づきました。
とは言え現実は、栗山さんのすばらしい食べっぷり、飲みっぷりを見ながら、お味噌汁と納豆とご飯で満足しているのだけど(笑)。

様々な事情を抱えながらもたくましく生きる人々の日常が、不動産屋さんという仕事を通して描かれています。
一日一日を丁寧に生きるためのヒントがここにあり。

「晩酌の流儀 年末スペシャル」が2023年12月30日(金)深夜に放送されるそうです。年末のひとときにおすすめ。

「悲熊」 ~究極の癒し系ミニドラマ

『悲熊』 NHK

キャスト:重岡大毅 黒島結菜 森川葵 北村有起哉 ほか
脚本:森ハヤシ
原作:「悲熊」 キューライス
全話配信:NHKオンデマンド

人気漫画「悲熊」を実写化したミニドラマシリーズから選りすぐりのクリップをディレクターズカットで45分サイズに再編集したものを、たまたま見ました。
その後「ご要望にお応えして」シーズン1とシーズン2の全16本をイッキ見で再放送もしていました。

ふざけてます。
制作費ほとんどかかっていません。
原作マンガの「熊」をどうやって映像化しているのかと思いきや、なんと顔出しの着ぐるみ。
さらに目を疑ったのが、悲熊がおぼれて川に流されるシーン。なんと熊のぬいぐるみを川に流して終わりにしていました(≧▽≦)。

子ども向け番組としてEテレで放映するはずだったのか?
いえいえ、「なんじゃこれは?!」と言いつつ、爆笑しながらうかつにも最後まで見届けてしまったのは昭和ミドル世代のオトナ。見終わった時にはすっかり毒気を抜かれていました。

悲熊役の重岡大毅さんがハマりすぎ…というか、彼以外ではこの役は無理と言っても過言ではないでしょう。
悲熊のカノジョ・クマンナ役の森川葵さんも負けず劣らずキュート。

 ”逆境にもめげず小さな幸せをかみしめる子熊ちゃんに、たっぷり癒されちゃってください”
 ~NHK HPより

はい、見事にヤラレました。ツボでした。

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