三方が山に囲まれている鎌倉は、敵の進入を防ぐためには有利な一方、人や物資の運搬には不便な地形でした。
そのため鎌倉幕府は山の一部を切り開いて、人ひとりしか通れない「切通し」と言われる細い道を作りました。
鎌倉に残る切通しのうち主要な7つの切遠しが「鎌倉七切通し(鎌倉七口)」と呼ばれる古道。
今回訪ねたのは、その中でも当時の様子を色濃くとどめている「朝夷奈(あさいな)切通し」。
鎌倉十二所と朝比奈を結ぶ朝夷奈切通しのルートは、秘境感たっぷり。アプローチしやすく、1時間ほどで踏破できるイチオシのトレッキングコースです。
母娘3人、秋の連休中の観光客でごった返す鎌倉駅を離れ、中世いにしえの古道を堪能してきました!
「朝夷奈切通し」へのアクセス
鎌倉駅方面、金沢八景駅方面 両側からバスで約15分。
「朝夷奈切通し」の山道ルートは徒歩60分ほどで踏破できます。
「鎌倉」駅 JR・江の島電鉄
⇕ 京急バス 約15分
「十二所神社前」バス停
⇕ 朝夷奈切通し 徒歩約1時間
「朝比奈」バス停
⇕ 京急バス 約15分
「金沢八景」駅 京浜急行・シーサイドライン
金沢八景側からのアプローチだと、足元がぬかるんだ滑りやすい山道が下りになってしまうので、今回は鎌倉側から「鎌倉駅 ⇒ 金沢八景駅」の方向でアプローチ。
また、この方向で歩いた方が、途中の見どころのひとつである「大切通し」に掘られた磨崖仏を見逃さずにすみます。
* 雨の翌日は山道が沢のようになるので要注意。お天気でもぬかるんでいるので、防水トレッキングシューズは必須。
*「十二所神社前」バス停には法事向けのお蕎麦屋さんが一軒ありますが、他に食事ができるお店はないので、鎌倉駅で飲み物や軽食を調達していくのがおすすめ(道中座る場所はないけど)。
お手洗いもないので鎌倉駅ですませておきましょう。
鎌倉駅バス停は、
JR・江ノ電「鎌倉」駅 東口
京急バス4番 鎌23・24系統
ほぼ10~15分間隔で出ています。
十二所神社バス停 ~ 朝夷奈切通し入口/十二所神社・太刀洗水
十二所(じゅうにそう)神社
朝夷奈切通し入口があるバス停「十二所神社前」にある十二所神社は、この地区十二所の氏神様。
無人だけれどきれいに手入れされていて、地元の人たちに大切にされていることがよくわかります。
殿の軒下に施されているウサギの彫刻にほっこり。
御朱印は、ここではなく大町にある八雲神社で頂けるそうです。
朝夷奈切通しの鎌倉側入り口は、「十二所神社前」バス停から道路を挟んで向かい側の小道を入り、10分ほどの場所。
が、バス停からすでに崖に挟まれた山道が始まっています。
太刀洗水
切通し入口の手前に、見逃してしまうほどさりげなく、湧き水がしたたり落ちる竹筒が設置されています。
実はここ、梶原景時が上総介広常を暗殺した後、ここで太刀の血を洗い流したという伝説が残されている湧き水。竹筒はどう見ても新しいけど。
2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の衝撃的なシーンは記憶に新しい人もいるのでは。
ここを過ぎると、いよいよ朝夷奈切通しの入り口に到着です。
朝夷奈切通し/三郎の滝・大切通し・熊野神社
鎌倉の海は遠浅で船をとめる事ができなかったので、鎌倉の東側にある六浦(横浜市金沢区)が鎌倉の海の玄関として栄えました。
六浦と鎌倉の中心部とをつなぐかつての主要路(六浦道)が、この朝夷奈切通し。
三代執権・北条泰時によって開かれたこの道は、六浦港から鎌倉へ、塩をはじめとする様々な物資が運ばれた重要な交易路であり、「塩の道」とも呼ばれていました。
三郎の滝
朝比奈切通しの鎌倉側入口にある「三郎の滝」。
切通しを一夜で切り開いたという伝説の剛力武士・朝比奈三郎に因んで名付けられたらしい。
「さすがに一夜で切通しを切り開けるわけないやろ」と調べてみたところ、朝比奈三郎は鎌倉幕府の重臣・和田義盛の三男・朝比奈義秀の通称で、北条義時打倒のために立ち上がった和田合戦の際に最も活躍した猛将でした。
なんと、朝夷奈切遠しを開いた北条家に反旗をひるがえした人物が滝の名前の由来になっていたんかい(^^;。
また、彼は他にも水中でサメを3匹生け捕りにしたなどの伝説もあり、後にその剛勇ぶりが誇張され、狂言や歌舞伎の題材にもなっているそうです。
この辺りから峠までは、沢沿いの湿った上り坂が続きます。
朝比奈側から来るとここは下りになるので慎重に。
前日から晴れていたにも関わらず滑りやすかったので、やはり雨天後は避けた方がいいかもしれません。
大切通し
両側に壁面がそそりたつ山道を登りきると、峠の少し手前にひときわ大きく覆いかぶさってくるような絶壁「大切通し」が現れます。当時は休憩場所の茶屋があったのだそう。
岩盤に磨崖仏(まがいぶつ)と言われる仏様が彫られています。
ここから更に進むと、熊野神社への分岐があります。
鎌倉で最もアクセスしにくいと言われている神社。ここからなら片道約7~8分でアクセスできるので、寄らない手はないでしょう。
熊野神社
朝夷奈切通しの熊野神社は、源頼朝が鬼門にあたるこの場所に、守護神として和歌山県の熊野三社大明神を勧請した(分霊として迎えた)ことがはじまりとされ、北条泰時が切通しを開削するにあたって社殿を建立。現在の社殿は1978年(昭和53年)に再建されたものだそうです。
小切通し
静寂に包まれた非日常的な空気を感じながら熊野神社分岐まで同じ道を戻ると、ほどなく大切通しに次ぐ規模の小切通しに出ます。
道幅が狭く両側に切り立つ壁が迫ってくる絶景。これをすべて人力で切り開いたのかと思うとため息が…。
風月はこのあたりの秘境感あふれる美しい古道が一番好きです。
小切通しを抜けると、横浜横須賀道路の高架橋が見えてきます。タイムスリップ感あふれる、いにしえの古道と現代の道が交差する場所。
高架下を抜けると、朝比奈側の入り口に到着~。
ここから5分ほどで金沢街道に出ます。
京急バス・金沢八景駅行きの朝比奈バス停は、道路を渡って右手すぐ。
目の前を通りすぎていったバスに間に合わず歩き始めたところ、金沢八景駅まではかなりの距離があることに気づき、結局途中のバス停で次のバスに乗車することに(-_-;)。
本数は少なめなので、あらかじめ時間を確認しておいた方がいいかもです。
称名寺・金沢文庫
朝夷奈切通しの現在のルートは、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時の指揮下で開削工事が進められました。
北条泰時は金沢北条氏として朝夷奈切通しの外側に菩提寺である称名寺や金沢文庫を建立し、その後三代に渡り独自の文化を構築。
時間があればぜひ称名寺・金沢文庫にも足を伸ばしてみて。朝夷奈切通への理解がより一層深まります。
称名寺
京急線「金沢文庫」駅 東口より徒歩約12分
シーサイドライン「海の公園南口」駅より徒歩約10分
県立金沢文庫
北条実時が設立した日本最古の武家文庫。
現在は鎌倉時代を中心とした中世の歴史博物館として、多くの国宝や貴重な資料を保管・展示しています。
「朝夷奈切通し」は、今ハマっている旅行誌「森さんぽ」からセレクトしました⇩(これ、ほんとに写真がキレイ!)。
もう一か所掲載されている「大仏切通し」にも近いうちに訪れてみようと思っています。
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