『おもしろがる実力があれば、
世界中どこでもおもしろい。
実力がない人は、変わったものでないと
よく見えないんです』
ー西江雅之(言語学・文化人類学者)
編集・ライターという仕事をする上で一番大切なものは「好奇心」だと思っている私にとって、西江氏の「おもしろがる実力」という言葉は、座右の銘として常にアタマにありました。
そしてこの言葉は、今や仕事だけでなく、どうやら私の「生き方」の根底にしみついていることに、最近になって気がついたのです。
私の半生は、ライター仲間に「事実は小説よりも奇なり。自叙伝を書くべき」と言われるほど、波乱万丈であるらしい。
ふりかかる理不尽な試練(?)に何度も潰されそうになりながら、その度にたくさんの人に助けられ、いまだに消せないトラウマをいくつも抱えて生きている。
なので私をよく知る人からは、それほどにしんどい思いをしながら、なぜそんなに能天気…いや、ポジティブに、ヘラヘラと笑って…いや、明るく笑っていられるのかと聞かれるのだ。
へこたれないよね、強いよね、と。
いやいや、私だって人間だ。
人並みに落ち込んだりヤケになったりすることはいくらでもある。
病弱な身体とお豆腐メンタル。自分では強いどころかきわめて弱い人間だと思っている。
ただ言われてみれば、落ち込むことはあっても、心を病むほど「ネガティブ」になることはあまりないかもしれない。
では私の「元気でいられる心」を支えているものはなんだろう?
と考えた時に思い浮かぶのが「おもしろがる実力」だ。
意識してそうしているわけではないのだが、私は窮地に陥れば陥るほど他人事のように客観的になって、最後には何でもおもしろがってしまうクセがあるのだ。
なんだかもう、笑っちゃうしかない時ってないですか。
心身ともにボロボロな時にさらに追い打ちをかけるようなトホホな場面。
そんな時私は、一歩下がって自分を見ている。
自分も含めて周りの人たちをキャラクター化小して、小説やドラマを見ているキモチになっているのだ。
え、なに、この後に及んでそうくる?
こんな展開が現実にあるの?
迷っているヒマはない、闘わなければ。
万策尽き果て、万事休す。
どうする私。誰か助けて!
なんと救世主現る!
ありがとう、まだ生かされている(T_T)。
…みたいな。
そんな風に窮地を乗り切ってきた私は今、樹木希林さんが残してくれた言葉がむちゃむちゃ心に染みている。
『どうぞ 物事を面白く 受け取って
愉快に生きて
あんまり頑張らないで
でもへこたれないで
おごらず 人と比べず
面白がって平気に生きればいい』
ー樹木希林「一切なりゆき」より
私の生き方をこれほど肯定してくれた言葉は他にない。
全力疾走してきて、人生後半への折り返し地点に立つ50代。
同年代の人たちの中には迷走している人も多いけれど、世の中がおもしろくないのは、人や環境などのせいではなく、自分の「おもしろがる実力」が足りないだけなのだということ。
好奇心さえ失わなければ大丈夫。
心身ともにガタがくるお年頃だけれど、この歳まで生かしてもらっていることだけで奇跡的。
これからの半生こそ、感謝を忘れず、好奇心を失わず、面白がって生きていきたい。
命をまっとうするまで。
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