本・映画・音楽・ドラマ

50代ライターが選ぶ【2024年冬・勝手にドラマランキングBEST5】

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隠れドラマオタク、昭和世代のライター・風月が、2024年冬ドラマから自分の好みだけで勝手に選んだBEST5。
前評や視聴率、口コミ等は全く関係ない、独断です。
*安定の「相棒」は除外しています。

たまたまかもしれないけれど、今期は「父親」に焦点をあてた作品が多かったように思います。
まだまだ家父長制の考えが根付いていた昭和世代のガンコ親父。男だからというだけで偉い、女は愛嬌をもって男をたて、家庭を守れ…という価値観は崩れ、令和では世代間ギャップが顕著になってきました。
けれど、そんなにあてなまらない人は、当然ながらどの時代にもいるわけで。

NHK大河ドラマ「光る君へ」~優雅ではない平安貴族社会で

『光る君へ』NHK総合
キャスト:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、吉田羊、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則 他
脚本:大石静

2000年代、私が最後まで視聴した大河ドラマは、「新選組!」「風林火山」「龍馬伝」「軍師官兵衛」「真田丸」「鎌倉殿の13人」(こうしてみると、三谷幸喜さんが書いたものはハズしていないな)。
別な言い方をすると、これ以外にハマったものがなかったわけで。そんな中で久しぶりにドハマりしているのが今期「光る君へ」。

風月は、短歌や俳句は超苦手分野。百人一首は大会に出るために全部覚えたものの、それは私の中では「スポーツ」の一環でした。
なので正直、「源氏物語」や、その舞台となった優雅な平安貴族社会にはあまり興味はなかったのだけど、この盛り上げようがない時代を大好きな大石静さんがどう描くのか興味深々で、とりあえず観てみたわけです。
初回、まさかの展開にぶっとびました(^^;。よね?放映中なのでネタバレはしませんが。
ともすれば単調になってしまいがちな派手な戦がない時代、個性あふれる俳優陣(キャスティングが絶妙!)の白熱の演技と、テンポよくウエットにとんだセリフ回しで、飽きることなくグイグイと惹きつけられてしまっています。

紫式部清少納言赤染衛門などの女性作家が普通に名前を残している時代。実は武家社会の戦国時代に入る前の方が、女性がアクティブに活躍できる時代だったのかも?
ちなみに大石静さんを「恋愛ドラマの達人」と評する人がいますが、それは違うのでは。私は、大石静さんは「女性の人生を描く最高峰の脚本家」だと思っています。

現在大学で日本文学を学んでいる次女の話によると、教授を含め、学部のほぼ全員が「光る君へ」を観ているだろうとのこと。受験でも源氏物語は必須だったのだから、そりゃそうでしょう(笑)。けれど古典に興味にあるかないかに関わらず、今期の大河はおススメですヨ。

*これまた何十年ぶり?に2024年4月にスタートしたNHK朝ドラにハマっています。「虎に翼」おそらく次期のベストに入るのではないかと。

「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」 ~「不適切にもほどがある」と何が違ったか

『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか』フジテレビ(東海テレビ)
キャスト:原田泰造・中島颯太・城桧吏・大原梓・東啓介・松下由樹・富田靖子 他
脚本:藤井清美
原作:「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」練馬ジム著 (LINEマンガ)
全話配信:FOD・U-NEXT

  「おっさんのパンツがなんだって
   いいじゃないか」(フジテレビ系)
  「不適切にもほどがある」(TBS系)

いずれも昭和のおっさんが令和世代の価値観とのギャップに翻弄される姿を描いてはいるものの、全く違った展開をたどったドラマです。

「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」は、原作マンガが幅広い読者から多くの共感を呼び、「おっパン」の略称で親しまれる人気作品。
「男は男らしく」という典型的な昭和世代の考えをもつ管理職サラリーマンが、ジェンダーやオタク文化など価値観の違う部下や家族と向き合い、自分がアップデートしていくことによって周りとの関係性を変えていく姿が丁寧に描かれています。

「不適切にもほどがある」は、クドカン(宮藤官九郎さん)脚本のオリジナルドラマ。
昭和のやんちゃ系体罰体育教師が令和の現代にタイムスリップ。コンプライアンスにがんじがらめになった現代に一石を投じます。
デリカシーのないおっさんの口からは、令和では完全にNGの「不適切発言」が次々に飛び出すけれど、最後には「お互いに寛容に」と、落としどころを見つけていきます。

同じように世代感ギャップを描いた作品なのに、なぜ私には「不適切~」が受け入れられなかったのか。

「おっパン」では、偏った価値観が正しいと信じてやまない昭和世代サラリーマンが、ゲイの若者と出会い、どこか達観して大人びた彼から大切なことを教わっていきます。そんな中でつぶやいた言葉がコレ。

 「あの子はきっと何度も
  傷つけられてきたんだろうな。
  俺みたいなやからに。


LGBTQ、発達障害、フェミニズム、ルッキズム、パワハラ、セクハラ…そんな不条理と必死で闘いながら生き抜いてきた人たち。「不適切~」では、その壮絶な苦労を茶化され、あっさりと笑いに変えてしまわれた感が、どうにもぬぐえなかったのです。
私もそれなりに、職場でのセクハラや夫からのモラハラと闘ってきた世代。特別に繊細な神経は持ちあわせていないけれど、そこはさすがに笑えない、という場面が多々ありました。
そりゃあ、なんでもかんでもハラスメントになってしまう行き過ぎたコンプライアンスに「それはないな」と思うことはあるけれど、それを比較対象にして「お互いに寛容に」で丸め込まれてしまったラストにはモヤモヤが残りまくり。「古き良き昭和」って、そこじゃないでしょ。

「おっパン」のタイトルの回収の言葉がコチラ。

『下着なんて個人の自由で好きなものをはけばいい。
誰の迷惑にもならないしそんなプライベートなことは他人には関係ない。
その人の心の性別がどうとか誰を好きになるかなんてこと、誰にも迷惑はかけない。
だから好きにすればいい。
おっさんのパンツがなんだっていいのと同じだ』

頭が固いゆえにこじらせている昭和世代がこんなに素直に人の意見を受け入れられるなら誰も苦労しないだろう、とツッコみたくはなるけれど、一刻も早く世間全体がアップデートしていくことを願ってやみません。

「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート」~

『さよならマエストロ』TBS
キャスト:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、吉田羊、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則 他
脚本:大島里美
全話配信:U-NEXT

天然で不器用な天才マエストロの父が、廃団寸前の市民オーケストラや素直になれないこじらせ反抗期の娘と、音楽を通じて心を通わせ、自らも成長していく。
前期に放映されたドラマ「リバーサルオーケストラ」と被るところも多々あったけれど、素直に「音楽」と「仲間」の素晴らしさが伝わってくるドラマでした。

つらかった時、絶望した時、頑張っていた時、自由になった時、大切な亡き人との思い出…その時代に聴いた音楽を聴くと、昨日のことのように当時のキモチがよみがえってきますよね。
さらに好きな曲を仲間と一緒に演奏した時の一体感や高揚感は、何にも代えがたいものがあります。
風月がハマる音楽は、もっぱらロックやポップス。昔バンドを組んでいたこともあったり、最近ではゴスペルなども始めてみたり。
正直クラシックはあまり聴かないのだけど、ジャンルを問わず音楽はいいなと思う。

画家である母がピアニストの娘に言ったセリフが秀逸でした。

『響は何を弾きたいの、何を伝えたいの
 表現したいことがないならやる必要はない
 芸術や創作は戦いじゃない
 何かに追われて急き立てられてやることじゃない』

アーティストとして頑張っている風月の娘も、この言葉を忘れないでほしい。

「春になったら」

『春になったら』フジテレビ(関西テレビ)
キャスト:奈緒・木梨憲武・濱田岳・深澤辰哉・⾒上愛・光石研・筒井真理子・小林聡美 他
脚本:福田靖
全話配信:FOD・NETFRIX

余命3ヶ月と宣告された父と、その父から結婚を反対されている娘。
早くに母を亡くし、父ひとり子ひとりで反発しながらも支え合ってきた父娘が「死ぬまでにやりたいことリスト」「結婚までにやりたいことリスト」とを実現していく3カ月間を描いたホームドラマ。

最終回では「やりたいことリスト」をすべてかなえ、娘の「結婚式」と父の「旅立ちの日」の式典が同時に行われる。
娘の花嫁姿を見ながら、自分たちを支えてくれた人たちに感謝を伝えることができるなんて、なんという幸せなお別れ。

お涙ちょうだいのホームドラマではなく、自然に死を受け入れ、生を受け継いでいく親子の姿に救われました。
あらためてこれからの人生後半を大切に生きていきたいなあと。

「ブラッシュアップライフ」

『ブラッシュアップライフ』日本テレビ
キャスト:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木 華 他
脚本:バカリズム
全話配信:Hulu Netflix

実は放送されたリアルタイムでは1回目で見るのをやめてしまったシリーズ。
数々の賞を受賞したと知り、年末にまとめてやっていたので見てみると、これがあまりに秀逸だったので今期でランクインしました。

交通事故で死亡した女性が死後の世界に送られるが、生前の人生を最初からやり直すチャンスをゲット。来世のために徳を積むべく、2周目の人生が始まります。
いわゆるタイムリープものだけれど、SFに寄せるどころか、過去~現在のリアリティが満載。日常の「あるある」が詰まった構成の巧みさと、淡々と展開されるバカリズム氏のシュールなセリフ回しに爆笑。この人、やっぱり天才だな。

淡々とした雰囲気が魅力な安藤サクラさんがまたハマり役。
「徳」のため、友達の命を救うために人生をやり直す。パイロットにまで登りつめ、カッコいい女たちとして雑誌にまで注目されながら、友達の命を救って目的を達成したらあっさりと辞めて地元に戻り、市役所や保育士などの仕事につく。
救えた時には成し遂げた達成感だけが残る。誰かのためではなく、結局は自分のためなのだと共感する。

最後には幼なじみの4人の女友達が、地元の高齢者施設で一緒に楽しく過ごしながら人生を全うします。
4人とも恋愛や結婚というアイテムがないところがいい。恋愛に依存しない生き方にほっとしてしまった。
やっぱりバカリズム氏はスゴイ(笑)。

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