本・映画・音楽・ドラマ

50代ライターが選ぶ【2023年春・勝手にドラマランキングBEST4+2】

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隠れドラマオタク、50代シングルマザーのライター風月が、2023年春ドラマから自分の好みだけで勝手に選んだBEST4+2。
前評や口コミ、視聴率は全く関係ない、独断です。以下、ネタバレもありますのでご了承ください。

今期目立ったテーマは「家族のあり方」。
虐待、ネグレクト、親ガチャ、ワンオペ育児、シングルマザーの孤立…日本はいつからこんなに子育てがしづらい社会になったのか。自分の経験と重ねて、あらためて考えてしまいました。
「血のつながり」とは関係ない「人とのつながり」が人を育てていける柔軟な社会を作るには、まだまだ課題が満載のようです。

1位 「ラストマン ー全盲の捜査官ー」

「ラストマン ー全盲の捜査官ー」 TBSテレビ

出演:福山雅治・大泉洋・永瀬簾・今田美桜・寺尾聡・津田健太郎・上川隆也 ほか
脚本:黒岩勉
全話配信:Paravi

全盲で人たらしのエリートFBI捜査官と、手段を選ばず強引に事件を解決していく刑事がタッグを組み、難事件を解決していく痛快バディ刑事ドラマ。
豪華なキャスティング、クセのある個性的なキャラ、奇抜で派手な展開。これだけ揃えば間違いないよなー、と、実は最初は少し引き気味に観ていたのだけれど…回を重ねるごとにジワジワとその脚本の構成力にヤラれ、目が離せなくなり、最終回で「コタロー」を抜いてとうとう今期1位に!

第1話から置かれていた数々の伏線が徐々につながり、形になり、実力派俳優さんたちの見事な演技でしめくくった圧巻の最終回。
福山雅治さん、大泉洋さんはもちろん、度肝を抜かれたのは二人の父役の津田健太郎さんの、終焉を迎える渾身の演技(思わず二度見をしてしまったほど)! 津田健太郎さんはもともと声優さんとして活躍されているのですね。いやはやお見事でした。

タイトルを回収すると、このドラマでは「ラストマン」とは「過去に縛られた男・過去に引きずられた男」という意味で使われています。
バディの二人が縛られた過去から脱却できたのは、実の親だけでなく、血のつながりがない親子や兄弟を思う家族の愛情やきずな、周りを取り巻く仲間たちの支えがあってこそ。これこそが最初から最後まで一貫して描かれていたテーマだったのではないかと。

ちなみに、脚本を書いた構成作家の黒岩勉氏は「TOKYO MER~走る緊急救命室」も手掛けています。
春に放映された新作SPドラマが記憶に新しい人も多いのでは。現在(2023/6現在)公開中の劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室」の導入となった単発ドラマ。
問答無用でカッコいい、ブレることのない信念を貫く完全ヒーロー型チーム。
現実はこんなにうまくいくものではないし、もっともっと壮絶で理不尽な場面があるはずとは思いながらも、後味がよすぎて目が離せない作品でした。

2位 「帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし」

「帰ってきたぞよ!コタローは1人暮らし」 テレビ朝日

出演:横山裕・川原瑛都・ 山本舞香・ 生瀬勝久 ほか
脚本:衛藤凛
全話配信:TERASA

2021年4月に放映された「コタローは1人暮らし」の続編。
訳あって1人暮らしをしている少年・コタロー(川原瑛都)を、売れない漫画家・狩野進(横山裕)を始め、同じアパートに住む優しい大人たちが見守る。

「母親がいなくなったのは自分が重荷だったから、父親がいなくなったのは自分が弱いから」「強くなりたい、ひとりで何でもできるようになりたい」と、気を張って頑張って一人暮らしをするコタロー。
しっかりものではあるが笑ったり泣いたり、感情表現をすることがなかったが、『母が亡くなたことをちゃんと受け止めて悲しまなきゃいけない。オトナぶるんじゃない』と狩野に諭され、子どもらしさを取り戻していく。

コタローを支える大人たちはもちろんアパートの住人たちだけではない。
コタローの亡くなった母から依頼を受けて保険金等を管理している法律事務所のスタッフや、幼稚園の先生、大家さん夫婦など、たくさんの大人たちが、それぞれの立場でコタローの成長を見守る。
そしてそれぞれが「大人としての責任」に気づき、自らもコタローと一緒に成長していくのだ。
コタローに出会うまでは怠惰に暮らしていた狩野も、
『実の親だとか一緒に暮らしているとか関係なしに、自分のことを棚に上げてでも、大人には言わなきゃいけないことがあるんだ』
というセリフを言うまでに成長する。

子どもを育てるのは血のつながりのある親だけではない。
毒親に育てられ、ワンオペ・シングルで子育てをしてきた風月も、周りにまともな人たちがいたから、自分も娘たちもまともになれたと思っている⇩
 虐待・毒親の連鎖は断ち切れる

まあ現実的には、この「性善説」に基づいた物語の展開には
「世の中そんなにいい人ばかりじゃないんだけど」
「そんなにまっすぐでいい子ばかりなら、子育てなんて苦労しないっしょ」
というツッコミどころもあるっちゃあるのだが(笑)、だからこそ、人の優しさを信じてみたくなってしまうのだ。
安心して子どもが産める、安心して子育てができる社会にするためのヒントが、ここにあるのでは。

最終回で狩野がつぶやいたセリフが素敵すぎた。
『コタローに「幸せってなんだ」って聞かれたんだんだけど。好きなマンガ描いて、みんなとこのアパートで暮らして、あいつがいて、皆が笑ってて。今が幸せだと気づいたよ』

原作のコミックは既巻9巻目、「ビッグコミックスペリオール」(小学館)にて連載中(2023/6現在)。

3位 「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」

「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」 テレビ朝日
出演桐谷健太・比嘉愛未・北村有起哉・磯村優斗・中村アン・吉瀬美智子 ほか
脚本:福田靖
全話配信:TERASA

2020年に放映された桐谷健太さんと東出昌大さんのW主演ドラマ『ケイジとケンジ〜所轄と地検の24時〜』の続編。
東出さんは降板となったが、その変わり個性豊かな俳優陣が桐谷さんを囲む。

刑事・仲井戸豪太(桐谷健太)は、体育大学出身の人情あふれる元熱血教師。
ストレートで単純明快、肩を組んでどや顔でわかった顔をして正論を語る元教師。実際にこんなウザいヤツがいたら総スカンをくらうところだが、桐谷さんが演じるとそれがすべて許される…というか、勘違い系愛されキャラになってしまうからおもしろい。

仲井戸豪太と検察庁の立会事務官・仲井戸みなみとの兄妹でのかけあいも見どころ。
毎回最後に横浜の港で繰り広げられる
『3人で青春するなや』
『恋する乙女みたいな目をするなや』
等々、豪太のツッコミがツボでした。

そんな彼らを囲む、刑事・検事・秘書官・判事・弁護士・町のおまわりさんetc…それぞれの俳優陣達も、回を重ね、スポットがあたるごとにキョーレツにアクが強いキャラとなっていき、最後には誰が主演なんだかわからなくなっていったほど(笑)。
それぞれの立場で正義をつらぬき、最終話では全員が一致団結して、綱渡りをしながら犯行の指示役を追い詰めていく。

単純明快で爽快な勧善懲悪がスカッとしてきもちよかったです。

脚本は、オリジナルの大人の群像劇やテンポのいいセリフ回しなどで定評のある福田靖氏。
ぜひシリーズ化を期待しています。

4位 「それってパクリじゃないですか」

「それってパクリじゃないですか」 日本テレビ

出演芳根京子・ 重岡大毅・常盤貴子・ 野間口徹・ 渡辺大知・ともさかりえ ほか
脚本丑尾健太郎・佃良太
監修西野卓嗣(弁理士)
全話配信Hulu

とある飲料メーカーで繰り広げられる「知的財産」をめぐる奮闘劇。同名の原作本・コミックが映像化されました。
お人好しで感情に振り回される「知的財産部」の社員・藤崎亜紀(芳根京子)と、妥協を許さない理屈重視の弁理士北脇雅美(重岡大毅)。正反対の2人がバディを組み、特許侵害などの知的財産に関するトラブルを解決していく。

”「知的財産権」とは,知的な創作活動によって何かを創り出した人に対して付与される、「他人に無断で利用されない」といった権利”
(文化庁HPより引用)

風月は、編集・ライターという職業柄、日ごろから著作権肖像権にはとても神経を使っています。
産業財産権である特許権実用新案権も、著作権と同じ「知的財産権」のひとつなので、このテーマには興味深々でした。

「大学の研究」と「企業の商品開発」が共同で行われる際におこる「あるある」の問題や、商品の製造方法をあえて特許として出願せず企業秘密として保持する理由など、「へえ~~」がたくさん。
(特許を出願すると製造方法は公開され、特許も20年しか持たないのだそう。そのため特許の出願をせず企業秘密保持を徹底していることで有名なのが「ケンタッキーフライドチキン」。アルバイトの人はもちろん、社員さんでも調理過程は知らない人が多いという話は聞いている人も多いのでは。)

ドラマ的に、ちょっとややこしくて難かしいテーマにわかりやすく花を添えているのが、個性的な登場人物のキャラ設定。
特に北脇さんの「王子様色がないツンデレぶり」がよかった。太い眉毛をぎゅっと寄せて、昭和のオヤジのようなしかめっつらをしながら「ありがとう」と言ったり。「仕事には感情を入れない」「屁理屈も立派な理屈」と言い切っておきながら、「感情で動いて人の気持ちに振り回されるのは、言い換えれば感受性が豊かで思いやりがあるってこと。短所に思えることでも見方を帰れば唯一無二の長所」と優しいセリフをつぶやいたり。

あと、いつも事なかれ主義の知財部の部長が最後に切った啖呵もカッコよきかな。
『みんなが苦労して作った商品、それをたくさんの人に飲んでほしい。願いはそれだけ。ビジネス戦略のかけらもない。モノづくりに携わる人間とはそうあるべきだと思っている。その無理が通るのを調整するのが私の仕事』

個人的に、ライター・風月としては、これをきっかけに記事の著作権や肖像権に関しても知ってほしいなあと思う。
SNSやブログで誰もが気軽に情報発信をできる時代。情報元がわからない無責任な記事や、パクリ記事が氾濫しています。
風月も写真やイラスト、コピーをパクられたことは何度かあり。利益に影響することではないので放置したけれど、決して気持ちのいいものではないです。

原作本、文庫はコチラ⇩

マーガレットコミックスはコチラ⇩

+番外編 深夜ドラマ「ソロ活女子のススメ 3」「波よ聴いてくれ」

番外編は、1日の終わりに疲れた気持ちを癒してくれた深夜ドラマ2本。難しいことを考えず、ぼーっと見流すのがおすすめです。

「ソロ活女子のススメ 3」 テレビ東京
出演:江口のりこ・小林きな子・渋谷謙人・佐々木春香 ほか
脚本・監督:及川博則
全話配信:Paravi・Lemino

フリーライター・朝井麻由美さんのエッセイ本「ソロ活女子のススメ」を原案にドラマ化された人気シリーズの第3弾。
ひとりで好きな場所に行き、ひとりで好きなことをして、ひとりの時間を楽しむソロ活女子・五月女恵(江口のりこ)の日常を描く。
「ひとりで行動すること」をわざわざ推奨することには違和感をおぼえるものの、共感すること多し。⇩
 「おひとりさま」とか「ソロ活」とか ~ひとりで行動することはそんなに特別なこと?
さすがに風月は「サンリオピューロランド」や「富士急ハイランドお化け屋敷」ソロはキビシイなあ…と「ひとりツッコミ」をいれるのもまた楽しい。


「波よ聴いてくれ」
テレビ朝日
出演:小芝風花・北村一輝・中原忠也・原菜乃華・平野綾 ほか
脚本:古家和尚
全話配信:TERASA

こちらも同名の原作コミックが映像化されたもの。
ひょんなことからラジオのパーソナリティをすることになってしまった鼓田ミナレ(小芝風花)の奮闘を描く。

マシンガントークでぶったぎる、うるさいだけのドタバタコメディかと思いきや、なぜか目が離せず最後まで見てしまった。
やっていることはむちゃくちゃでツッコミどころ満載な展開だけれど、ミナレの言葉が物事の本質をついてるのだ。
ミナレ自身だけでなく、決して荒唐無稽ではない「あるある」な視聴者たち。おしつけの心配を優しさをと勘違いしている妹、ひきこもりからたち直ったものの性根はひねくれたまま変わらない男。
「世の中そんなもん」だけど、そこを「四の五の言ってんじゃねえ」と爽快にぶった切る。
金曜の夜、たまったストレスもぶった切ってくれました。

小芝風花さんと言えば「彼女はキレイだった」「妖怪シェアハウス」等のかわいいヒロイン役が思い浮かぶけれど、今回は全く別の顔を見せてくれました。すがすがしいほど活舌がいいマシンガントークがお見事。声がいいせいか、うるさく感じないのがスゴイ。多才ですねーー。

原作コミックは既巻10巻(2023/6現在)。
「月刊アフタヌーン」連載中。

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